生き物

「ある日突然顔があることに気づく。」

・長崎へ小旅行に行った。長崎へは、池島の炭鉱跡や針尾無線塔、五島列島、壱岐島には行ったことがある。今回の目的は長崎ペンギン水族館とバイオパークだったので、そんなにあちこち回れなかったが楽しんだ。

・長崎ペンギン水族館は、国内でも有数のペンギン飼育数と聞いてからずっと行ってみたかった。そんなに大きな規模の水族館ではないが、それぞれのペンギンの飼育スペースは広々としていて、ペンギンたちがぷりぷりと健康そうだった。

・少人数制で飼育員さんが1時間たっぷりとガイドしてくれるツアーにも参加した。案内してくれた方はベテランの飼育員さんという感じの方で、展示する魚を漁師さんから分けてもらって集める大変さ(ex.ウツボは既にたくさんいるが、いらないとも言えず増え続けている)や、メコンオオナマズという巨大魚をタイまでもらいに行ったときの苦労話など、飼育員さんならではの裏話が聞けた。

・「ペンギンたちの世話をしていると、数年経ったある日突然ペンギンたちに顔があることに気づく。」という話が面白かった。人相ならぬペン相があり、年齢や性別もひと目でわかるらしい。ガイドツアーの整理券番号一番の女の子は持ち物がペンギングッズで固められているガチ勢の子で、そんな話を真剣な眼差しで聞いていた。

・通りがかりに長崎の凧の専門店も覗いてみたら、ハタ職人3代目のご主人が歴史や各地の凧について饒舌に説明してくれた。長崎では凧のことを”ハタ”と呼ぶそうだ。最大の特徴は、青、赤、白(と黒)色で、描画ではなく各色の紙を貼り合わせて作ること。糸はガラス繊維でコーティングしてあり、相手の糸に絡めて切って遊ぶらしい。負けた方は、落下したハタを手放さなければならないそう。厳しい。久しぶりに凧揚げをしたくなった。

タコブネに乗って

・タコブネという生き物を知った。同居人から教えてもらった『海からの贈り物』(著:アン・モロウ・リンドバーグ 新潮文庫)の中の一説に出てくるのだが、タコなのに自ら殻を作り(メスだけ)、海面を漂いながら生きるらしい。そもそもタコは貝の仲間だが貝殻を失った頭足類だ。それなのに殻を持つなんて。(しかし厳密にはオウムガイのような貝殻とは成分は異なるため、貝殻ではないらしい。)

・タコブネという名前も素敵だ。学名はArgonauta hians。Argonautaは、金色のヒツジの毛を探して航海したギリシャ神話が由来とのこと。どこまでも詩的。

・そうしてすっかり好きになり、色々と調べているなかで小さな標本を一つ購入した。

・非常に繊細な生き物らしく、捕獲しても数日しか生きられず水族館でも飼育に成功した例はないみたい。日本でも稀に、殻が海岸に打ち上げられることがあるらしいので、いつか出会えることを夢見ながら手元の殻を眺めている。

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