日記

編む日々

・画集が発売されて一週間が経った。コツコツと描いたサイン本も手元に届き始めたようで、感想がどれも嬉しい。ありがとうございます。
・画集に引き続き、一年以上かけて作ってきた新しい本のお知らせも近くあるので、ぜひチェックして待っていてください。

・数年前から編み物をしている。裁縫で服を作ることは中学生くらいからよくやっているが、編み物はなんとなく敷居が高く、マフラーくらいしか編んだことはなかった。しかしどうしても欲しいデザインを見つけて手を出してからは、いつも手元に何かしら編みかけのものがあるようになった。(忙しかったり飽きて放置する期間もままある。)


・鴨川で編みもの友達と一緒にそれぞれ編み物をしながらおやつを食べる会も時たましている。その会で基本の編み方である表編みをねじり編みで編んでいることが発覚。編みもの作家の友人に気づいてもらい無事治すことができた。なんか編みにくいと思ってたんだ..。
編み物につかれると手を休めて川や鳥を見る。川沿いでは本を読んだり楽器を弾いたりと、めいめい自由に過ごしている。

・編み込み模様や単純な模様の繰り返しの編み物を今は好んでよく編んでいる。仕事を終えて夜30分だけでも編んでいると、手元を動かしつつ考え事ができて、脳の疲れがほどけていくような感じがある。編めば着実に進んで、一本の糸が徐々に形を成していく達成感もある。

・気になっていた『編むことは力』(著:ロレッタ・ナポリオーニさん 訳:佐久間裕美子さん 岩波書店)を読み始めた。社会・政治における編み物の歴史。私たちはなぜ編むのか。

・編み物作家の三國万里子さんのデザインがどれも個性的で古着とも合わせやすい懐かしさが同居していて好きだ。先日初めて編んだ棒針の大物のカーディガンも三國さんのデザインだ。「海鳥のカーディガン」という名前で、模様とグラデーションになった色がどことなく鳥を感じさせる。前立てが伸びてたり編み目が揃っていなかったりとへたっぴだけど愛おしい。

最近作ったものたち。身につけるところがなくなってくるという問題もある。

・今はもうすぐ誕生日の友人にあげたくてミトンを編んでいる。星がたくさんあってかわいい。間に合うといいな。

卵を立てる器

・『カシワイ作品集』刊行記念展@恵文社一乗寺店が終わった。お越しくださった皆さま、気にかけてくださった皆さま、恵文社や玄光社の皆さまありがとうございました。
展示は勝手に場を作って「来てね」と言っているだけなので、毎回果たして誰か来てくれるのだろうかと緊張する。話すことは得意ではないが来てくださった方々とお話しできて楽しかった。画集は10/31に全国発売です。次は東京の青山ブックセンター本店で展示とサイン会をします。

・今回の恵文社の展示では画集に収録されているイラストのパネル展示に加えて、古道具の什器に蚤の市で見つけた玩具や、小石や貝殻を一緒に展示してみた。絵を飾るだけではなく、絵と共に場を立ち上げていく試みをもっと考えてみたい。

・出かけた先で老舗らしい陶器店の店先をのぞいていたら、奥から「見るだけでいいから!どうぞ!」という年配の男性の声に釣られて店内に足を踏み入れた。薄暗い店内には古風な食器や湯呑み、何に使うのかよくわからない大きい壺、応接間にあるようなガラスの灰皿などが所狭しと積まれている。どの食器にもうっすらと時間の分だけ埃が積もっている。この場所だけ時間の流れ方が違うように思える。

・店主の方は食器や陶器の知識が豊富で面白かった。日本にはかつて1904年創業のノリタケと、1908年創業のニッコーという二代陶器メーカーがあり、中国の故事を元にしたウィローパターンや葡萄柄のシリーズなどが大変な人気を博したそうで、NHKの朝ドラにもよく出てくるそうだ。「〇〇は1900年より前の話なのに、まだ発売されていないはずの葡萄柄のシリーズの食器が使われていて気になった」とのこと。知識のある人が見ると違う視点での気づきがあるんだな。

・戦前の灰皿にある謎の溝の話も面白かった。マッチでつけていたので、マッチ箱を立てるための溝が作られていたそうだ。生活が変わると道具も変わる。私はこの溝を見ても使い方がピンと来なかったが、現在使われているものでも未来の人間が見たら意味がわからないものもあるだろう。

・ニッコーのブドウ柄シリーズのエッグスタンド、牛柄のコイの箸置き、ガラスのパンダのマドラーを買った。エッグスタンドは、卵を立てるというあまりにも用途が限定された器なのが好きだ。子どもの頃に読んだ児童書にエッグスタンドが出てくると、そんな知らない生活の一端を感じてどきどきしたのを思い出す。素焼きの義卵を立てた。

さよならUFO信号機

・近所で信号機の電球を交換していた。クレーン車に乗った作業員が、電球一個につき15秒くらいの早業でさくさくと交換していく。最近ではLEDの信号機も増えたので電球を交換している様子が珍しくつい見入ってしまった。(警備員の方に早く通ってくださいね〜と促された。)

・以前仙台に行ったときに街中で見かけた不思議な形の信号機を思い出した。路地の交差点の中央にロの字型の信号機が吊るされており、外側の側面に車両用の信号機、内側の側面に歩行者用の信号機が表示されている。狭い路地にも支柱一本で8つの信号機を設置できる利点がある。正式名称は「懸垂型交通信号機」だが、その形からUFO型信号機とも呼ばれているそうだ。

・気になって調べたら、昨年2024年夏に老朽化のため、最後のUFO型信号機が撤去されたそうだ。仙台にのみ現役で残っていたらしい。散歩していてあの信号機が目の前に現れた時のときめきを思い出して少し寂しい気持ちになっている。

巻き戻しへの印象

・本の準備などを並行して進めている。片方はこの秋に、もう二つは来年はじめと春くらいに世に出せる予定なので良いものになるよう力を尽くしたい。

・鳥の暑さ対策で外に水おけを置いておいたらイソヒヨドリが毎日のように水浴びしに来るようになった。イソヒヨドリは警戒心がない方だと思うけど、それにしても3回くらい出たり入ったりしつつゆっくり浴びているのでリラックスしてくれて嬉しい。

・最近のこどもアニメを流しながら作業をしていたら、過去の回想シーンで、画面の下にシークバーが現れてその再生地点を一気に戻すという表現が出てきた。一昔前だったらキュルキュルとノイズが入りつつ逆再生のように巻き戻すという表現だったと思う。しかし現在の子どもたちが慣れ親しんでいる動画では、巻き戻しても当然ノイズなんて入らないし、バーの位置を変えれば好きな地点にすっと戻れる。

・最近だとSNSを眺めているという表現も、XやInstagramではなくTikTokもよくみられるようになった。時代を写すのはガジェットの形だけではないんだな。でもそれでも人間が悩んでいることなんかはあんまり変わっていないのは不思議だ。

木漏れ日箱

・下鴨納涼古本まつりに今年も行ってきた。

・学生の頃に森見登美彦さんの本を読んでいた身としては、京都で毎年開かれるこの古本まつりには長年の憧れがあった。京都に越してきてからは毎回欠かさず足を運んでいる。特別めぼしい本が見つからなくても、糺の森の木陰の中で古い紙の匂いに囲まれながら本棚を覗き込んでいく時間が楽しい。東京に住んでいた時は神保町古本市に行っていたがそれとはまた違う趣がある。

・段々と古本まつりの装備もわかってきた。木陰とはいえ真夏の開催なので暑い。じんわりと汗が滲んでくる。毎年配布される古本まつりのうちわがありがたい。今年は扇風機が服に埋め込まれた作業用ベストを来ている人も見かけた。戦利品の本をしまうための空のリュックを背負っていく。足元は長時間でも辛くない歩きやすい靴。屋台で軽食も食べられる。本を見るのに疲れて一服する時に飲むラムネは天国の飲み物感がある。

・今年は古い雑誌数冊と絵本などを買った。挿絵が素晴らしい洋書にも心惹かれたが20000円という価格に慄き諦めた。
絵本は私がちくま文庫版の装画を担当した『星の牧場』の作者、庄野英二さんの絵本を買った。福音館書店の月刊絵本シリーズから出した『きゅるきゅる』という絵本で、庄野さんが戦時中に従軍した南洋の雰囲気も少しある。
あと『機関車の系譜図2』という機関車の専門誌も買った。現役で走る機関車を見たことは数えるほどしかないが、そのフォルムや鉄の塊が蒸気を出して走るところに心を惹かれてしまう。図面と写真が載っているので資料に良さそう。調べたらどうやら全4巻もあるらしい。

・古本市で体力を使い果たし、帰って短いひるねをしたら夢を見た。夢の中で私はかつて風だった本で、古本市で誰かに手に取られたところで目が覚めた。起きてもまだしばらく本だった感覚と本箱から見た景色が目に残っていてぼんやりとした。

GENESISをふりかえる

・東京創元社のSFアンソロジーシリーズ「Genesis」の最後に装画を担当した号が8/12に発売される。元々単行本で刊行されていたが、3年前から雑誌『紙魚の手帖』の夏のSF特集として合併された。単行本の創刊号から8年間描かせていただいたことになる。毎年、編集の方、デザイナーの方とどんなテーマの装画にするのか話し合うも楽しかった。自由に描かせていただいたのでどれも思い出深く、折角なので備忘録も兼ねて簡単に振り返る。

『Genesis 一万年の午後 創元日本SFアンソロジー』

・テーマは「宇宙×工場」。月面にあるうさぎ工場を描いた。おもち製造機などを参考に発想を膨らませて考えていった。最初は表1だけのご依頼だったが、途中から表4まで回すことになり、慌ててラインを増築した。この人物は共通して登場していく。

『Genesis 白昼夢通信 創元日本SFアンソロジー2』

・テーマは「学校×恐竜」。授業中に窓の外を見たら恐竜たちの時代に繋がっていたという様子。さりげなく帯に隠れる部分に哺乳類の祖先を描いたらそれに言及してくださる方もいて嬉しかった。

『Genesis されど星は流れる 創元日本SFアンソロジー3』

・テーマは「団地×海』。団地の資料用に近所の団地に写真を撮りにいったら怪しまれて申し訳なかった。潜っていくような俯瞰の構図に。特に気に入っているのは植木鉢をすみかにしているタコ、ジンベエザメとコバンザメ。

『Genesis 時間飼ってみた 創元日本SFアンソロジー4』

・テーマは「オフィス×動物」。動物たちはそれぞれ体格や特性が違うのでどんなオフィスにするか迷ったが、フリーアドレスで椅子や机に制約がないものにした。ネタ出しが楽しかった思い出がある。ヨウムの電話番がお気に入り。

『Genesis この光が落ちないように 創元日本SFアンソロジー5』

・テーマは「温室×鳥」。この号で単行本としての刊行は最後だと伝えられていたため、祝祭的なムードを描くことにした。地面も天井も描きたかったので歪んだレンズで撮影したような不思議なパースにした。植物も鳥も好きなので、モチーフが多く一番大変だったが楽しく描いた。

『紙魚の手帖 vol.12 Genesis 夏のSF特集』

・この年からGenesisは単行本ではなく雑誌『紙魚の手帖』の夏のSF特集として掲載されることになった。装丁も、今まではnext door designの小柳さん、長﨑さんが担当してくださっていたが、アルビレオさんが担当してくださることに。表紙の面積が狭く文字も多いので、一枚絵ではなくパーツごとに描いてデザインいただくスタイルで納品している。

・テーマは「時間」。SFのおハコでもあるテーマ。時計の歯車や星の軌道、咲いて枯れていく花など、幅広く描いた。カメは『モモ』のイメージ。

『紙魚の手帖 vol.18 Genesis 夏のSF特集』

・テーマは「架空の都市」。どこか懐かしい雰囲気の街を描いた。勝手に組み合わさって増えていくような街が好き。

『紙魚の手帖 vol.24 Genesis 夏のSF特集』

・テーマは「宇宙」。創刊号と同じ宇宙で締めることに。壊れた宇宙都市の中で、AIが搭載されたロボットと友情を育んでいる、という設定を考えながら描いた。8年間描いてきたこの人物が、寂しい場所でも幸せに過ごしているといい。

花ブロック

・取材で沖縄へ行った。一泊二日なのでほとんどの時間を取材に費やしたが、早起きしてホテル近くの住宅街やアーケードを散歩したりした。旅先ではなんでもない道を歩くのが楽しい。自分の小さな生活の外側にある別の生活を目にすると、あったかもしれない無数の人生に触れられる気がする。

・沖縄の住宅はコンクリート造の建物が多かった。戦後に木材が不足していたこと、アメリカの統治下でアメリカの建築工法で建てられたこと、シロアリや台風にもコンクリート造の方が強いことが要因にあるらしい。本州ではブロック塀の通風ブロックとして用いられる穴あきのブロックが、外通路の柵として装飾的に使われているのが印象的だった。「花ブロック」と呼ばれ、沖縄で独自に発展した文化だそうだ。さまざまな模様があり可愛かった。

・ヤシの木を見ていたら、「ひょっとしてラフィアヤシに興味がありますか?」と突然話しかけられた。その人はどうしてもラフィア繊維を使って自分で帽子を作りたいそうで、苗を売ってないか植物園に聞いたが売ってないと言われて落ち込んでいた。繊維をとれるくらいヤシが成長するのを待つのは途方もない気がするがどうなんだろう。いい帽子が作れるといいですねと言って別れた。

旅先や最近読んだ本の一部

・『急に具合が悪くなる』(著:宮野真生子さん、磯野真穂さん 晶文社)

随分前に図書館で借りて読み、これは何度も読みたいと思い買い直した本。濱口竜介監督が映画化すると聞いて久しぶりに再読した。魂の会話がやっぱり素晴らしかった。

・『いなくなくならなくならないで』(作:向坂くじらさん 河出書房新社)

「高橋源一郎の飛ぶ教室」で紹介されていたのを聞いて読んだ。友人のことをどれだけ知っていると言えるのか。幽霊なのか人間なのかもわからない友人と同じ姿の生き物がどんどん家族に侵食してくる。読み終えた時タイトルがその通りでなんて良いタイトルだと思った。

・『鳥の心臓の夏』(作:ヴィクトリア・ロイド=バーロウさん 訳:上杉隼人さん 朝日新聞出版)

自閉スペクトラム症の女性の一人称で語られる、自身の娘と、突然引っ越してきた奇妙な隣人の話。作者自身も自閉スペクトラム症であることを公言している。水中越しに世界を覗いているような感覚がリアルで苦しい。温室の光の感じや手話の会話の時間の穏やかさ。

・『プロジェクト・ヘイル・メアリー』(作:アンディー・ウィアーさん 訳:小野田和子さん 早川書房)

電子書籍で買って途中で止まっていたが、旅先に持って行った紙の本がなくなり最後まで一気に読んだ。『オデッセイ』のようなハッピーエンドなんだろうと斜に構えていたが、かなりよかった。読み終わってようやく安心して映画の予告編を観た。読んでない人は絶対に見ない方がいい。映画も楽しみ。

生きている薮と深い井戸

・夕方になると外に出る生活。ツバメの雛も暑さでぐったりとしている。地球を人間がこんなことにしてしまって申し訳ない。近所にある空きテナントの前に、水が循環するため池がある。少し前に、誰かがそのため池に紫陽花を生けていた。空き家なので誰が紫陽花をそこに置いたのかはわからない。通るたびに、暑さで色を失い少しずつ枯れていく様子を見ていたが、ついに無くなった。


・河原でアオサギが羽根を乾かしていた。アオサギは羽根をハート型に折り曲げるようにして乾かす。カワウと違う。

・少し前に福知山で開催されている「こうの史代展」に行った。福知山に現在在住されているこうの先生が30年の画業の中で描かれてきた、膨大な作品の原画をみることができる。繊細な水彩のカラーイラストや、幾つも線を重ねて丁寧に描かれるひとりひとりの営みにぐっとくる。最新作の短編集の『描く人へ』も素晴らしかった。

・折角福知山まで来たので周辺を散歩した。明智光秀が築いた福知山城にある井戸がよかった。大型の井戸で、深さが50mもあるそうだ。覗きこむと遥か下に水面が反射するのが見えた。岩でできた井戸の壁面にはシダ植物がたくさん茂っていた。

・福知山紹介記事でこうの先生が散歩コースとして紹介されていた「明智薮」という薮も見た。由良川の川岸すぐ近くにある三角州のような土地に鬱蒼と竹や木がが生えている。薮に近づいていくとギャアギャア、グウグウとすごい数の生き物の声が聞こえてきた。藪全体が一つの生き物のようで恐ろしい。どうやらカエルの声の他に、サギの一大繁殖地となっているようでそれが一番の声の原因のようだった。旅先でも川を見つけるとよく見にいく。由良川も良い川だった。

ふたつの飛行機について

・飛行機というモチーフが好きだ。人間が空を飛びたいという大それた夢と欲望が具現化されたもの。どことなく鳥のかたちに似ている。

・私の部屋には二つの飛行機がある。一つは、京都の古道具屋で買ったものだ。バルサ材という建築模型などに使われる材料で作られた簡素なもので、飛行機というものを極限まで簡略化したようなかたちが気に入っている。細い透明な糸で天井から吊るしており、夏の空調でゆらゆらと揺れている。

・もう一つの飛行機は、数年前に人からもらった。以前住んでいたの地域の掲示板には、月替わりで近所の人がそれぞれ自分の宝物を紹介するという新聞?のようなものが貼ってあった。ある月、部屋中を埋め尽くした模型の飛行機が紹介されていた。その横には、「見学されたい方はどうぞお気軽にご連絡ください」と電話番号が添えてあった。数日迷ったが、電話をかけてみるとどうぞ来てくださいとのことで足を運んだ。その家は、私の家から徒歩5分もしないところにある古い一軒家だった。

・おばあさんが出てこられて、2階へと案内してくれた。その部屋が掲示板で見た飛行機の部屋だった。部屋の中央には、おじいさんが椅子に座っていた。男性は脚が悪いらしく、男性の周りの半径一メートルほどの範囲に、全ての生活用品が置いてある。壁の一画には、古い文学全集が並んでいた。

・どうぞご覧ください、と言われて、棚の中に整然と並んだ飛行機を一つ一つ見た。飛行機は、航空会社で使われている旅客機が多い。どの飛行機もどこにも飛び立つことなく斜め上に機体を向けて静止している。部屋の掛け時計が秒針を刻む音が響いている。飛行機をなぜ集めるようになったのかと尋ねると、彼はこんな話をした。

・彼は戦時中に九州の方に住んでおり、学徒動員で航空隊に配備されたそうだ。仲間は次々と飛び立ち、戻ってくることはなかった。もうすぐ自分の番が来る。そう思っているうちに終戦を迎えた。自分は飛行機で飛び立つことがなかったのでこうして生きているが、なぜか飛行機に惹かれ続け、こうして集めてきたらしい。彼自身もあまりその理由をうまく説明できないようだった。

・帰りに折角きたのだからどれでも好きなものを持って帰っていいと言われた。何度か遠慮したが、どうせあの世には持っていけないし、子どもも孫も興味がない。これは処分されるだけだから、との言葉に、棚の隅にあった飛行機型の鉛筆削りをもらって帰った。その鉛筆削りは今は私の本棚の上にある。

ひかるおなか キーソバ

・暑い。毎日冷たい麺ばかり食べている。京都に越してきて4度目の夏だが、盆地特有のジリジリと鉄板の上で焦がされているような暑さには全く慣れない。あと景観保護の関係で建物が低い&街路樹が少ないので日陰の面積が他の市より少ない気がする。

・こっちにきてから、「キーソバ」を初めて知った。「黄蕎麦」の意味で、中華麺を出汁で食べる麺類の総称らしい。うどん屋や蕎麦屋で提供されている。初めて食べた時は「中華麺だなあ」という感想だったが、今の季節に食べる冷やキーソバがとても美味しい。先日もお店で食べていたら鍋を持った常連さんが現れ、カレーうどんを鍋に入れてもらって帰っていった。そういう買い方ができるのは素敵だと思う。

・忙しさに追われていたらいつの間にか蛍の時期を逃してしまった。眠る前に少しずつ『光る生き物の科学 発光生物学への招待』(著:大場裕一さん 日本評論社)を読んでいる。光る理由は生き物によって様々だが、海の中階層にいる生き物のほとんどは「隠れるため」に光っているらしい。お腹を光らせることで、海面側がほんのり明るい中に姿が影として浮かび上がらないようにしているそうだ(カウンターイルミネーション)。ホタルイカやイワシもその理由で光っている。生き物が光るのは見つけてほしいからだと思っていた。海の中でおなかが光っているのはちょっと面白い。

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