卵を立てる器

・『カシワイ作品集』刊行記念展@恵文社一乗寺店が終わった。お越しくださった皆さま、気にかけてくださった皆さま、恵文社や玄光社の皆さまありがとうございました。
展示は勝手に場を作って「来てね」と言っているだけなので、毎回果たして誰か来てくれるのだろうかと緊張する。話すことは得意ではないが来てくださった方々とお話しできて楽しかった。画集は10/31に全国発売です。次は東京の青山ブックセンター本店で展示とサイン会をします。

・今回の恵文社の展示では画集に収録されているイラストのパネル展示に加えて、古道具の什器に蚤の市で見つけた玩具や、小石や貝殻を一緒に展示してみた。絵を飾るだけではなく、絵と共に場を立ち上げていく試みをもっと考えてみたい。

・出かけた先で老舗らしい陶器店の店先をのぞいていたら、奥から「見るだけでいいから!どうぞ!」という年配の男性の声に釣られて店内に足を踏み入れた。薄暗い店内には古風な食器や湯呑み、何に使うのかよくわからない大きい壺、応接間にあるようなガラスの灰皿などが所狭しと積まれている。どの食器にもうっすらと時間の分だけ埃が積もっている。この場所だけ時間の流れ方が違うように思える。

・店主の方は食器や陶器の知識が豊富で面白かった。日本にはかつて1904年創業のノリタケと、1908年創業のニッコーという二代陶器メーカーがあり、中国の故事を元にしたウィローパターンや葡萄柄のシリーズなどが大変な人気を博したそうで、NHKの朝ドラにもよく出てくるそうだ。「〇〇は1900年より前の話なのに、まだ発売されていないはずの葡萄柄のシリーズの食器が使われていて気になった」とのこと。知識のある人が見ると違う視点での気づきがあるんだな。

・戦前の灰皿にある謎の溝の話も面白かった。マッチでつけていたので、マッチ箱を立てるための溝が作られていたそうだ。生活が変わると道具も変わる。私はこの溝を見ても使い方がピンと来なかったが、現在使われているものでも未来の人間が見たら意味がわからないものもあるだろう。

・ニッコーのブドウ柄シリーズのエッグスタンド、牛柄のコイの箸置き、ガラスのパンダのマドラーを買った。エッグスタンドは、卵を立てるというあまりにも用途が限定された器なのが好きだ。子どもの頃に読んだ児童書にエッグスタンドが出てくると、そんな知らない生活の一端を感じてどきどきしたのを思い出す。素焼きの義卵を立てた。

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